《MUMEI》

「必要無いならもう脱ぐからな!」

釦を外そうと手を掛けようとすると


「待った、」

七生の制止が入り、手の平に指先が滑り込む、耳元に息がかかる。

「脱がせるから、な?」

揺れるように官能的な毒気を帯びた低音に、拒否権を剥奪された。
瞼が甘さで溶けてゆく、盲目なくらいが調度いい。

擦れる皮膚同士のむず痒さを堪えるのは難しく、釦が一つ、また一つと外れてゆくのはもっと別の次元の疼きだった。




「ふあ、 あつ……」

止まない熱に体中がひくつく、耐え兼ねて足掻いても指紋の跡は隈なく付いてゆく。

七生の舌の温さが耳の後ろを走る、軌跡が湿って涼しい。


「二郎の味、する。」

自分に匂いがあるのはわかるが味は知らない。


「どんな……」


「まろやか。」

真顔で言われたので妙に説得力がある。

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