《MUMEI》

チョコ「ちょっと待っててね…。


いま、おつまみつくるから…。」



そう言ってチョココローネはキッチンへ向かった。





――… トン・トン・トン …


まな板の上で包丁を叩く音が心地よい。



鰯の叩きを柚子味噌で和えた、美味しそうな薫りがカレーパンマンの鼻先を擽った。



匂いにつられてキッチンの方を向くと、そこにはカレーパンマンより15歳も若く、美しい妻の姿が在った。



母親から一人の女性に戻った妻の立ち姿は、背筋から腰にかけて、ふっくらとした陰影をおび、なんとも言えないセクシーさで、夫を一人の男に変えてゆく…。



カレーパンマンは缶ビール片手に、そこから立ちのぼる、匂い立つような色香に目を細めていた…。

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