《MUMEI》
本当の兄妹
各務野も、そんな濃への接し方を心得始め、以前よりも意思の疎通が楽に感じ始めていた。

「今日は、少し長い読み物をお持ちしました」

そう言って、各務野が書物を開きはじめたとき、

突然、意外な人物が現れた。

「…各務野はおるか?」

いきなり名を呼ばれ、各務野がハッとして顔をあげると、
回廊からひょっこり顔を覗かせた、少年がいた。

彼の顔を見て、各務野は目を見張る。

「若様!」

素っ頓狂な声をあげると、濃も自然と顔をあげた。
少年と、濃の視線が、絡み合う。

各務野は本当に驚いていた。

なぜなら、今、現れた少年は、この美濃国当主・斎藤道三の嫡男、豊太丸だったからだ。
豊太丸は濃よりも少し年上で、まだ元服は済ませていないものの、美濃国の跡取りとして大切に育てられていた。

慌てふためきながら、「いかがされました?」と尋ねる。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫