《MUMEI》 「賢史大丈夫か!?」 先輩が俺に駆け寄り、 心配そうに俺の顔を覗き込む。 俺は応えなかった。 いや、応えられなかった。 左足のふくらはぎに強烈な痛みが走るのだ。 あまりの痛みに、 何度も気が遠くなりそうになる程だ。 フッと、頭が後ろへのけ反ったところで、 先輩が俺の両肩を掴んだ。 「しっかりするんだ賢史! 試合はまだまだ続くぞ。」 「はい。」 やっとのことで其れだけ応えた。 先輩はそれに微笑むと、俺の目をしっかりと見つめた。 「お前は今、重大なミスを犯した。 それは分かっているな?」 「……はい。」 気まずくなって目を逸らそうと試みるが、 逸らすことが出来ない。 先輩の目が俺を捕えて話さない。 すると先輩は、 両肩を握る手を強めて言った。 「よく考えろ賢史。 冷静になれ。 俺達に出来て、アイツらに出来ないことがあるだろ?」 前へ |次へ |
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