《MUMEI》 「うわぁ……おいしそ……」 そんな声が聞こえて、チラリとそちらに視線を送ると俺の弁当を覗き込みながら、箸を片手に瞳をキラキラさせている陽和がいた。 「……食う?」 あまりにも人の弁当を覗き、そこから離れない陽和が目の前にいると、いくら人を気にしない俺でも流石に気になる。 思わずそう言ったが、陽和は、首を横に振った。 「そ。」 俺は、特に気にもせず箸を手に持って、玉子焼きに手を付けた。 「頂きます。」 両手を綺麗に合わせて、陽和は俺の目の前でそう呟いて、自分の弁当に入っていた些か色素が薄く感じるきんぴらゴボウを手に持っていた箸でつつく。 昼休みの終わる、予鈴が鳴った。 この日、和月たちは何故か来なかった。 陽和は、その理由を、どうやら知っているようで、たいして気にする様子もなく、午後の授業を受けていた。 国語、社会、と授業を終え、終学活も何事もなく終わった。 開け放った窓から、涼しげな風か入り、窓際に寄る。 窓の外から見える、遠くの空には、いつもと変わらず、大きな積乱雲が立ち上っていた。 前へ |次へ |
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