《MUMEI》

呆然と立ち尽くしている各務野のもとへ、女中達がやって来て、眠り込んでいる濃の姿を見つけると、皆、呆れたようにため息をついた。

「ちゃんと、いらっしゃるではありませんか」

「きっと暗がりで、見紛えたのでしょう」

「各務野殿、お疲れでいらっしゃるのでは?」

口々呟きながら、女中達は各々の閨へと戻っていった。

各務野は釈然とせず、濃の傍らに近寄り、
その顔を覗き込んだ。

濃はあどけない顔で、微かに寝息を立てている。

どこかに起きぬけた直後には、どうしても思えなかった。

…やはり、勘違いだろうか。

気味が悪かったが、各務野は無理やりそう思い込むことにした。


−−−しかし、


その後も、濃が忽然と姿を消すことが、何度か続き、

いよいよ各務野は怪しんだ。


…こうなったら。


各務野は、決意した。

ある夜、濃を寝かしつけたあと、

その傍から離れずに、濃を見張ることにしたのだった。

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