《MUMEI》
現れた乙女
.

−−−夜も更け。

濃はすっかり夢の世界へ入り込んでいた。各務野は時折遅い来る睡魔と戦いながら、その無邪気な寝顔を見つめていた。

…今宵こそは、必ず。

自分に言い聞かせ、懸命に起きていたのだが、瞬きの回数が徐々に減り、そのうちに瞼を持ち上げていることが難しくなり、つい、我慢出来ず眠ってしまったのだった。



不意に、



夜の凍てつくような静寂の中で、


カタン…と、なにかの物音が響き、


各務野はハッと目を覚ました。
慌てて濃の褥を確認したが、

時すでに遅し。


そこは、もぬけの殻だった。


…しまった!!

己の失態に軽く舌打ちすると、各務野は急いで濃の閨から、縁側の回廊へと飛び出した。



−−−そして、


息を呑む。



各務野が立つ、その回廊の外に広がる、大きな庭。

その、暗がりの庭の中、

ユラリと揺らめいた、影があった。

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