《MUMEI》

「‥契約記念日‥?」


どないな記念日やねん、それ‥。


「ていうか、わざわざ祝わんかてええんとちゃうの?」


「そうはいきませんよ──僕達の恋が始まった日じゃないですか」


「な‥」


あたしはまだそん時は‥。


「何か腑に落ちない事でも?」


「ぃゃ、だってあたしは‥」


「そうですか? 契約して下さった、という事はつまり──」


「ちゃうからっ」


あれは、アンタが──


『──命令です。僕と契約して下さい』


とか言うたからやもん。


「ていうかむっちゃ豪華やな‥今日の晩ゴハン‥」


「記念日ですから」


ニッコリ笑いかけられて、ドキッとしてしもた。


「──では、乾杯といきましょうか」


「ぇ、ちょ‥」


「葡萄ジュースですよ。ご心配なく」


「──ほな‥ええけど‥」


ほんまに大丈夫やよな‥?

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