《MUMEI》

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歳の頃、18、9の乙女だった。

身体の線は細く、華奢で、

黒く艶やかな長い髪を夜風になびかせ、

闇に浮き上がる肌は雪よりも白く、

そしてなによりも印象的であるのは、


その双眸−−−。


漆黒の闇を思わせるような黒い瞳を、立ち尽くしている各務野にまっすぐ向ける。


各務野は、《謎の乙女》の出現に戸惑うよりも、
彼女の持つ神秘性に、
一瞬で、心を奪われたのだった…。



******



−−−はじめて、時を駆けたのは、


まだ、4つか、5つか。


わたしが、幼かった日のこと、


自分の閨で、眠っていた筈だったのに、


目が覚めたら、どういう訳か、


見知らぬ、場所にいた…。



ウトウトと眠りについたのが、夕暮れ時。
あれから、ずいぶん時は流れているはずだから、今は真夜中の筈…、

−−−なのに。

再び目を開いた時、目の覚めるような青空が、視界に飛び込んできた。

しかも、いつもの見慣れた閨ではなくて、見知らぬ田舎道に、わたしは立ち尽くしていたのだった。

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