《MUMEI》 少年と時が刻まれる音. …ここは、どこ? 一体、なにがどうなってしまったのか。幼かったわたしには、ひとつも理解することが出来なかった。 途方にくれるわたしの脇を、ザア…と強い風が吹き抜けていった。青々と茂る草が、ユラユラ揺れていた。人通りはほとんど無かった。 どうしたらいいのか分からず、わたしは、道の真ん中でうずくまった。 するとそこへ、 「なんだ、チビ?」 声をかけられた。 振り返ると、そこにはわたしより10程年上の、男の子がいた。 男の子は、今まで見たこともないような出で立ちをしていた。 頭のてっぺんで無造作に縛り上げられた髪の毛。纏っている袖から腕を抜いた片肌脱ぎ。履いている半袴は虎と豹の皮を交ぜ縫いにしたもの。腰には長い刀が二本と、瓢箪やら袋やらがぶら下がっている。 その姿をぼんやり見つめていたわたしに、 彼は、言った。 「なぜひとりでいる?」 彼はわたしのことをジロジロ見つめてきた。凄みのある目つきだった。 父上…美濃の道三殿でも、こんな目でわたしを見ない。 前へ |次へ |
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