《MUMEI》 しばらくわたしを観察してから、男の子は言った。 「親とはぐれたか?」 わたしはなにも答えず、彼を見つめた。 彼はわたしの視線を鼻で笑い、呟いた。 「気にくわんな、その眸は。子供のくせに澄ましよって」 悪態にも、わたしは怯まなかった。 −−−確信していた。 この、男の子は、 わたしを、 危険にさらすことは、ないのだ、と、 最初から、分かっていた…。 黙り込んだわたし達の間に、沈黙が流れる。 しばらくして、男の子が、根負けしたように、ため息混じりに言った。 「…お前の村はどこだ?送り届けよう」 「ついて来い」と言い切って、彼は突然踵を返し、スタスタ歩いていく。わたしは素直に彼の後を追いかけた。 男の子は颯爽と、進んでいく。流れゆく風のように、軽やかな足取りで。 遠くから、男の子が二人、こちらへ近づいて来るのが見えた。 彼らは、この不思議な男の子を見て、「吉法師様!」と口々に呼びかけていた。 …《キッポウシ》? この男の子の名前だろうか。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |