《MUMEI》
授けられた名
.


−−−あるとき、

わたしは再び、15歳の《キッポウシ》に会った。
時は、夕暮れ。場所は、どこかの立派なお屋敷の部屋。
わたしの隣で、仰向けになりねっころがっている彼は、そこが『那古野城』と言う場所なのだ、と教えてくれたが、わたしにはそれが、一体どこにあるお城なのか、見当も付かなかった。

その部屋にしつらえられた、縁側のきざはしから覗くその空の端っこは、群青色に染まりだしている。

わたしはその空を舞う、蝶々の姿を見つけた。

「蝶々…」

わたしがぽつんと呟いた台詞に、

寝そべっていた《キッポウシ》が、ムクリと起き上がる。

彼は、わたしの顔を見て、「蝶がすきか?」と突然尋ねてきた。わたしは頷き返した。

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