《MUMEI》

「グーデンターク モイモイ コンニッチワ♪」
「ぇ///…グーデンターク///」

結構フレンドリーなカンジのジェロニモさんは僕に手を差し伸べてきたので握手をすると、野球のグローブのような大きな手で、僕の手はまるで子供のように包み込まれてしまっていた。


「ビス モアゲン(また明日)」
「ダンケ ビスモアゲン(ありがとう、また明日)」

ジェロニモさん達と別れの挨拶をすると、大きなジェロニモさんは軽々と肩にミニョンちゃんを抱えて帰って行った。

その姿はまるで肩にオウムを乗せた海賊王のようだった。




「モイモイ…って何ですか?」
「ん…この辺の方言で”こんにちは”だが…誰かに言われたのか?」
「ジェロニモ…いや、ミニョンちゃんのパパに///」

帰ってきた克哉さんが脱ぐスーツを受け取ると、そっと気付かれないように匂いを嗅いだ。

いつもしている事で、この帰ってきた時の克哉さんの香りがたまらなく好きだった。

「ジェロニモ?」
「何でもないです、僕の心の中だけのアダナですι」

ジャケットをクリーニング用に分けてシャツを受け取ると、ふと知らない石鹸の香りがした。

「ぇ…?」
「どうした?」
「いえ…何でも…」


ヒヤッと血の気が引くカンジがした。


(まさか…克哉さんがそんな…)

僕も昼間のジェイミーとの事を思い出して、心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしはじめた。


「ぁ…洗濯物置いてきます///」
「そっちはバスルームじゃないぞ…」

フラフラと部屋を出て何故か玄関の方に歩いていたのに気が付いてその場にへたり込んでしまった。

「どうしたんだアキラ?」
「…何でも…ないです///」
「何でもあるんだろう、その言い方は…言ってみろ」

克哉さんに肩を掴まれ、あの顔で凄まれると…思っていた事を言わざるを得なかった。

「…石鹸の香りが」
「は…石鹸?」

克哉さんはそれを聞くと、驚いたような顔で僕を見ていた。

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