《MUMEI》

□一宮兄妹と幼馴染み□

「ねぇ志遠。今日さ。私暇なんだけど、うち、遊びに来ない?」

俺と陽和は今日、掃除当番だ。
俺と陽和、それからその他のクラスメイトの二、三人以外はこの放課後の教室には誰もいない。

陽和は、ほうきを手に持って、小さなゴミを黙々と掃いていたかと思えば、突然そんなことを言った。

「はあ?」

何で俺だよ。

「だって今日はみんないないんだもん。」

僅かに動かしていたほうきがピタリと止まる。

「……誰も?……」

間抜けたことに、聞き返してしまう。
だって、有り得ねえだろ。アイツらが三人揃ってコイツから離れるなんて。

「うん。用事あるから」

天変地異の前触れではないかと思った。

「何の?」

一体全体どんなに大事な用なのだろうか。

「あぁ、婚約者同士の食事会。偶然、日程がダブったんだって」

それこそ、耳を疑った。

「こ……婚約者……?」

我ながら情けない声だとは思うが、この際そんなことは気にならない。

「うん。婚約者」

さも当然のように言う陽和に唖然とする。

「澪と和月は婚約してるんだよ。あと、永久と由良(ゆら)ちゃんも。許嫁同士なんだ。」

にっこりと笑って、とんでもない爆弾をこいつは落とす。

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