《MUMEI》

「ごめんな、別れる気は全くねぇよ…ただ…」
「大丈夫だよ、武と付き合い始めた時にパパに言ったらね、パパ喜んでくれたんだよ♪早く彼氏の顔見せろってさ、彼氏だって♪」

かなたの父親に気に入られてるのはいつもかなたが父親の話をしてくれるんで知ってるんだけど、その…。

こっちでは大目に見てもらってるようなカンジだけど、向こうで受け入れてもらえるかどうかが心配だった。

「…じゃあ俺、向こうでずっと女の子の格好してるよ」
「えっ///」

そりゃ、今だって学校の男子制服を着ている方が少し違和感があるくらいだったけど、ずっとってのは…。

「俺みたいな男の子なんて居ないし、男の子だって気づかれないよ」
「そりゃ…そうだな」

サッカーの試合とか、テレビで見るドイツはどいつもこいつもムキムキで俺らと同じくらいの年の連中なんか全員プロの格闘家に見えるもんな。

でも…こいつらもそのドイツの血が流れてるんだろ…。

「武とドイツかぁ〜楽しみだな♪」

はるかと言い…どこでどう間違ったのか、こんな細っこい腕して克哉さんみたいなあんな体格とはほど遠い容姿なのか…。

「きっとお前らは日本の血が濃く出たんだろうな…」
「え、一番上の兄弟の方がお母さん似になるんじゃないのぉ?」
「お前の兄さん母親似なのか…だったら俺は、長男だからお袋似、なのかな…」

前に親父の子供は俺一人だって、親父と喧嘩した時になんとなくそんなような意味の言葉を聞いた事があった。

その時は頭に血が上っていて分からなかったけど、今思うとそんな意味だったのかも…真意は分からねぇけど、そういうカンジの言い回しだった。



後日、双子と一緒に役所に住民票を取りに行って改めて自分の身の上を知ることになった。

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