《MUMEI》

「フ──それはそうですね。では、リビングでお待ちしてますので」


案外、すんなり出てってくれた。


「ふぅ‥」


──はよ着替えて下行かな。


「よいしょっ──と──」


支度済ませて、扉開けたら。


「ぅわッ‥おったんかいな‥」


「気付きませんでした?」


「うん‥全然‥」


アンタ、時々スパイみたいな事しよるなぁ‥。


「何で待ってたん?」


「そんな気分でしたので」


「気分なぁ‥」


アンタの気分は──ほんまコロコロ変わりよる。


「参りましょう。せっかく淹れた紅茶が冷めてしまいますよ?」


「ぇ、うん‥‥‥」


夜もドキドキやったけど。


‥‥‥今もかなりドキドキや。


「また宜しかったら来て下さいね」


「アンタの部屋‥?」


「僕からお伺いするかも知れませんが」


「‥ぇ」


‥本気なんかい。

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