《MUMEI》
誓い
「……行くぞ」
かなりの間、黙ってその場に立ち尽くしていたユウゴが口を開いた。
「置いてくの?」
「……だって、どうしようもないだろ。埋葬したくても、ここらには土がない。火葬は……嫌だ」
「……そう、だね」
ユキナは鼻を啜りながら、由井を見つめている。
血だまりに横たわる由井は安らかな顔に見える。
こんな人生の終わり方、悔しかっただろう。
こんな時代に、こんな国に産まれたばかりに……
「見てろ、由井。俺は、生き延びる」
ユウゴは誓うようにギュッと口を引き締めた。
左腕がズキッと痛む。
傷口がすっかり開いてしまったようだ。
ユウゴは右手と口で強く包帯を締め直すと、しっかり由井の姿を瞼に焼き付けて、倉庫を出た。
その後に、無言でユキナが続いた。
倉庫の外には、すでにミサはいなかった。
血の後が点々と続いているが、とても後を追う気にはなれない。
あの怪我だ。
放っておいても、もう何もできないだろう。
倉庫街から出た時、ふとユウゴは後ろを歩くユキナを振り向いた。
「なに?」
キョトンとした表情で聞くユキナ。
その肩には、重たそうなボストンバッグがかかっている。
「忘れてた。それ、何が入ってんだ?」
「ああ、これね。よかった、気付いてくれて。超重かったし」
苦笑しながら、ユキナはよっこらせとバッグを下ろした。
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