《MUMEI》

ドイツの空港に着いてかなたは入国審査って所で何度もパスポートを確認されていた。

やっぱり性別の所で戸惑ってるんだろうな、これから海にでも行くのかって格好だったし周りの人間と比べても明るい色でなかなか目立っていた。

「女の子の格好つっても限度があるだろ…」
「だって可愛いいの見せたかったんだよ〜この前買ったんだ♪武見た事無いでしょ」

隣でぴょんぴょん跳ねながら俺に飛びついてきたかなたを抱えて歩いていると、現地のおばさんがそれを見てクスクスと笑っていた。


はるかとかなたが携帯で克哉さんと連絡を取っている間、手持ちぶさたになった梅子ちゃんとほぼ初めての会話らしい会話をした。

「機内食にソバが出るとは思わなかったぜ…」
「牛丼もあったね///」

固かったパンの事とか色々と話しながら、梅子ちゃんが持ってきた小さなノートを見るときちんとドイツ語を勉強しているのが見えた。

「すげぇなぁ〜」
「えっ、ちょっとメモとかしておかないと、と思って///」

そう言って小さなメモに今まで通ってきたルートとか、ちょっとした事なんかをこまめに取っていて関心してしまう。

俺なんか周りに書いてある文字なんか一つも読めねぇし、かなたに付いてかなきゃ何一つ出来ないかもしれない。

「…なぁ、こんにちはって何て言うんだっけ」
「え、ぁ…グーデンタークだって」
「あぁ、ダンケシェーンとかだと思ってたぜ」
「それは、どうもありがとうです///」

俺たちがそうやって笑いながら話し合っていると、突然かなたが間に飛び込んで来て俺の胸に顔を埋めてきた。

「な、何だよι」
「……ぅ〜」
「あッ!かなたさん私そんなんじゃなくって///」

どうやら俺らが話してるのを見て勘違いしちまったようだった。

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