《MUMEI》 決着、互いにボロボロ「避けるのが無理なら・・突破するのみ!」 弓を手から離し、宙に浮いている剣と小刀をそれぞれの手に持つ。 バサリ!! 翼が大気を叩く。 衝突、術の壁の中を突き抜けていく。彩詩の翼が大きく広がり、光が羽のように飛び散っていく。 圧倒的な術の量、進むが押し戻され・・それでも前へ。ひたすらに前を目指す。 「抜け・・・た!!」 押し潰すような圧力が消え、視界が開ける。そこに控えていたのは・・極大の魔法陣。そしてただ一人、佇むハンディング。 「これを・・耐えれるかどうか・・見せてもらおう!」 術が、発動する。禁呪と呼ばれる・・最凶ランクの術が。 「プリズン・スキュラ」 声が響く。 全てを塗りつぶすように一条の昏い光が解き放たれる。 プリズン・スキュラ。闇、光系の禁呪。極限まで収束された魔力が光すら通さず、黒い帯となって敵を穿つ。この魔法の前では全ての防御が意味をなさず、全てただ穿たれる。止めるには同程度、つまり禁呪クラスの魔力で相殺するしかない。さらにこの帯は術者の5感と同調し、術者の敵と判断したものを追い続ける。掠っただけで、漆黒の闇に塗りつぶされ、消滅する。避けるためには、術者の五感の届かない範囲まで逃げるしかなく、術者が死亡した場合、敵、そう判断されたモノは光と闇の精霊たちがその帯を導き、消滅させる。 「こんな魔法くらい・・・叩き潰す!!!」 加速し、昏い光に剣と小刀を叩きつける。真正面から・・一歩も退かず、叩きつけた。 背の翼が大きく広がり、飛び散っていく。凄まじい魔力が剣へと流れ、昏い光に喰われていく。 少しずつ昏い光が剣を侵食していく。 「解き放て!!!!!!」 小刀から紅い雷が生じ、昏い光を僅かに押し戻すが、紅い雷が昏く染まり、消滅していく。 「ああああああああああああああああああああああ!!!」 背の翼が大気に散り、代わりに叩きつけた剣と小刀が白く発光する。 ザシュゥゥゥン・・ 昏い光が切り裂かれ、消えていく。 糸が切れたように、地面へと落ちていくハンディング。 「ハンド!!」 残った僅かな翼で強引に飛び、ハンディングを受け止め、そのまま地面に落ちる。 背の翼が完全に散り、意識を失っていく彩詩。 「も〜・・・ダメ・・・」 「彩詩・・やり過ぎとはそなたの・・事を言うのでは・・ないか?」 隣で同じように倒れているハンディングが何か言っているが、返事も出来ずに意識が沈んだ。 返事が無い。その事に不安を抱き、彩詩の側へと動かぬ体を強引に動かし、彩詩の顔を覗き込むハンディング。 「息は・・しているな。」 思わず漏れた安堵のため息。そしてふと、思い至る。 (仮想世界であったな・・・やれやれ・・我としたことが・・熱くなりすぎたようだな・・) 苦笑し、そのまま折り重なるように横になり、意識が沈むに任せた。 ・・・・・・・ 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |