《MUMEI》
元服の宴
.

−−−結局のところ、


豊太丸様の言葉の続きを聞くことが出来なかったのだけれど、

それ以降、豊太丸様は普段通り、わたしと各務野に接した。


それから、わたし達は安穏とした日々を過ごして、



………その数年後。



豊太丸様は、15歳になると元服し、その名を『斎藤新九郎義龍』と改めた。

逞しく育った兄上は、これから父・道三のもとで、武将として仕えることになった。



******



「…よろしかったのですか?」

豊太丸…新たな名・新九郎の元服の祝いの席で、斎藤氏に古くから仕える宿老の長井道利が、主君の道三にこっそり耳打ちした。

道三は道利の顔を見、「なにがだ?」と尋ね返す。
道利は言いづらそうにしながらも、言葉を探し、それを紡ぐ。

「豊太丸…いえ、新九郎様は、あの土岐頼芸の堕とし胤。武将に育てあげるよりも、このまま遠方の寺へ預けた方が…」

道利は、新九郎の出生の謂われを知っていた。だからこそ、主に忠告したのだ。

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