《MUMEI》

ひそやかな声でそう言われ、道三はギロリと眼差しを鋭くした。

「新九郎が、この俺に謀反を起こすと申すのか?」

主の気迫に肝を冷やしたが、道利は怯まずに答える。

「その可能性も、否定出来ないという話です。新九郎様の出生を知っている者が、いつ若様にその話をするか、わかりませんよ」

諭すように穏やかな声で言ったのだが、無駄だった。道三は眉を吊り上げ、物凄い目つきで道利を睨みつける。

「俺に意見することは許さん。新九郎はこうして名を改めた。名実ともに、この斎藤の跡取りなのだ」

「くだらない話はよせ」と一蹴されてしまった。
道利は一抹の不安を覚えながらも、道三の傍から離れていった。



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