《MUMEI》
真実は現在《いま》にあり--
[私は天使であることを隠し、十七年を地球で生きた]
フルアが宙《そら》に差し伸べた指を打ち鳴らした
鐘が鳴る様な音と共に、
周囲は青々とした草原と化した。
「なっ…なんだ?」
「…幻術だ」
うろたえるリツにジンが言う
「今は身を任せて大丈夫だ」
空は、蒼い
[私たちは長い間地球にいると、環境の差により心身へ悪影響が出てしまう]
リツは辺りの、たった今まで“白”だった床や天井を見た
[私たちが地球を見守る期間は、各天使が二十年ずつ]
三人の周囲の風景は
変わりない様に見える草原を
かなりの速さで移動している様だった
[その中で出会った人間のほとんどは、私たちの容姿を見るだけで情欲に駆られ、我を失うような輩ばかりだった]
「…だろうな」
リツが気にくわなそうに言う
[しかし私の内面を見破り]
三人の正面に見えてきた、人影
それは徐々に大きくなって
その人物の顔がはっきり分かる位、近寄ると
移動は止まった。
[…それでも尚、見据えてくれる人間が現れた]
茶色がちの瞳、黒髪のその人影は三人の方向に手を差し伸べて、微笑んだ
包み込む様な微笑み。
それは男だった
やがて、その手に他の手が乗せられた
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