《MUMEI》 ・・・・暴れる長剣に気を取られ、飛んでくる尻尾に反応が遅れてしまう。 「その程度の剣で私の身体に傷を付けられるとでも。舐められたものだ、真名も明かしておらん宝具に遅れをとるほどこのアーヴァンクは脆くはない」 「気づいていたか」 「それでも明かさんか。その過剰な自信、後悔するがいい」 太く頑丈な尻尾が鞭のように打ちつけられる。 何度も何度も鞭を振るい、中庭のありとあらゆるものを削ぎ、変貌させていく。 「どうした、私を殺すのではなかったのか」 回避し続けていたカイルは足を止め、その太く頑丈な尻尾に挑む。体勢を整え、片手で握っていた身の丈ほどもある長剣を両手で握りしめた。 重い一撃が剣身の一点に集中するその瞬間、カイルは魔力の奔流を全身に流し迎え撃つ。 一時の均衡を見せたものの、このまま続けばこちらが押し負けるのを察知し、あちらの攻撃を利用しつつ自ら遙か後方へ飛び退った。 だがアーヴァンクも甘くはない、距離を測ったカイルに休む間を与えず追撃をかける。容赦なくその攻撃を浴びせ、圧倒的な力を見せつける。 その全てを危なっかしく躱し続けるカイルであるが、さきほどエリザに受けた痛みが響き徐々に回避速度は落ちて行っていた。 落ちるばかりのカイルに対し留まる事を知らぬアーヴァンクの猛攻。黒髪の騎士はみるみるうちに追い詰められ、ついに背が壁に当たる。 魔力放出の負担に耐え切れず足は軋み、もう魔力放出は不可能となっていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |