《MUMEI》

あたたかい風が、頬を撫でる。縁側に正座して、庭に咲く花を眺めた。
花といえば、あなたはいつも薔薇を持って来てくださいましたね。高貴な紫。可愛いピンク。清楚な白。明るい黄。そして、豪華な赤。
あんまり毎回だから不安になって、無理なさらないでください、と言ったら、

「「別に、庭に咲いてたから、持って来ただけだ!」」

と、慌てたように照れた。本当に?庭に咲いたにしては、とても綺麗で、鮮やかです。

「「当たり前だろ。俺が、大切に世話したからな。」」

あらあら、誇らしそうに微笑まれて。あなたのお庭には、いつも薔薇が咲いているのですか?

「「もちろん。
そうだ、今度、見に来るか?」」

・・・え?あなたの、お庭を?

「「ああ・・・。い、嫌なら、別にいいからな!!」」

・・・いいえ。
拝見したいです。あなたの、お庭。あなたの、薔薇。

「「ほ、本当か?」」

はい。ぜひ。

「「よしっ!じゃあ、約束だからな?」」

はい、約束ですよ。
約束。

やくそく。

したのですけれどね。

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