《MUMEI》

「次は何歳のときかな〜」
「還暦じゃね?」

「えー30年後〜!?長ーい」

「誰かもういっちまってたりして」

「ちょっとやめてよ!!」
「ハハハハ……」


みんなの笑顔を見ていると、あの頃に戻ったよう。

同時に、たくさんの後悔が込み上げてきた。



―――あのとき、「もらって」と言えていれば


―――あのとき、同じ高校に行っていれば


―――あのとき、連絡先を聞いていれば


―――あのとき、見栄をはらなければ


―――あのとき、「覚えてる」と言えていれば



―――あのとき、…「好きだ」って、言うことが出来ていれば……




「詩織!?どうしたの??」

「泣いてるの??」

「どうしたんだよ神田、別れがさみしいのか?」

真剣に心配してくれるみんなに、自然と笑ってしまった。

「フフッ、そう、みんなと別れるのが寂しくてさっ」

「そうかそうか、んじゃ、独り身の神田のために、10年ごとにやることにするか!」

「けってーい!」

「わー楽しそうー!良かったね、詩織っ」

「うん、ありがとう」


嘘。10年ごとに、石田に会わなきゃいけないなんて、無理。しんどい…



「じゃあまた10年後になー!」

「ばいばーい」


明日からまた、いつもの日常。

今日の日の約束のために生きてきた。

明日から、何のために生きればいい?



「おい!!!!」

キキィィィィィィーーーーー!!!!!!!!!!

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