《MUMEI》

七生の服はやっぱりサイズが合わなくて、違和感がある。
バスルームから重たい体を引きずりながら出た。


「一生分の運を使い果たしたかも。」

七生の感想がこれだ。
奴の居るベッドに、近付くには言葉が必要だ。
真実の言葉だ。


「俺、嫌なやつだった。
七生が瞳子さんに傾いてくのが怖くて離れようとしたり、引き止めたくて出し抜くように七生に許したり……でも後悔はしてない、七生ともっと沢山のもの共有したいから、七生は教師になって欲しい。海外に行かないで。」

溜め込んでいたもの、この際だから全て吐き出す。


「俺だって、カッコつけたせいで二郎に負担かけてた。
瞳子さんが二郎と深い仲になって欲しくなくて婚約したし。」


「本当、馬鹿。」

自分に言ったのか、的確な自己分析の七生に言ったのかわからなくなる。

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