《MUMEI》
気付くと、誰かの胸の中にいた。
信号は、“今”、青になった。
「…しんじらんねー…、あぶねーだろ!!気ぃつけろこのバカ!!!!」
「…石田……」
「っはぁー…、焦った、超走った…心臓止まりかけたっつーの……」
言いながら、あたしをギュウっと抱きしめる腕。
「言う前に死なれたらたまんねーぜ…」
言う…?何を…?
ふっと離れたその手には、ゆびわが。
「あのよ、俺」
「聞きたくない!!」
「は?」
いやだ!聞きたくない!!「俺、結婚した」って言う気なんだ!
約束?何のことって、絶対言うんだ!そんなの…
「うそつき!石田のうそつき!!死ね!このバカザル!!」
「さ!サルだぁ!?てっめー、いいから聞けっつーの!!」
耳を押さえる手をはがそうとする石田。
懸命にもがく自分。
「おい!神田!」
「いやだ!うるさい!何も言うな!!」
「結婚しろ!!」
「・・・・・・・・え」
「結婚しろ。俺と」
思考回路が、停止した。
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