《MUMEI》 ・・・・満身創痍、カイルの身は度重なる強行に悲鳴を上げ続けていたのだった。それでも勇ましく立ち騎士は敵を見据える。 いまだ屈さぬ憎き騎士に、怪物は侮蔑の視線を送る。 「どうした人間、我が契約者の兄であろう。暇つぶし程度には楽しませないか。これでは虫を相手にしているようなもの、退屈過ぎる。 さきほどまでの威勢はどこへいった」 カイルの頭上より見下すアーヴァンクが痺れを切らしたように捲し立てた。 面白くもない遊びに意味はない。アーヴァンクは獅子をも丸呑みにしてしまう大口を広げ、幕を引こうとする。 そのときカイルは諦めたように舌打ちを一つ打ち、しぶしぶ口を開いた。 「なら、見せてやろう」 カイルの囁きはアーヴァンクの耳には届かない。だがそんなことはお構いなしに、カイルは囁き声をそのままに立場を逆転させてしまう言葉を紡ぐ。 「――解放、“ 焼き尽くせ ”」 その言葉を以って、世界は音を立て変わりはじめていた。 前へ |次へ |
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