《MUMEI》

「……おまえ、一度その中に何が入ってるか把握しといた方がいいぞ」
ユウゴは呆れて言いながらケンイチからトランシーバーを受け取る。
スイッチを入れてみると、ザーッと雑音が流れ出した。
「これ、使えんのか?」
「当たり前だろ。使えねえ物を俺が持ってるわけないじゃん」
「ふーん。……で、何メートルぐらい使えるんだ?」
ユウゴが聞くと、ケンイチは記憶を探るように腕を組みながら「五十メートルくらい?」と答える。
「ほんとか?」
さらにユウゴが聞くと、ケンイチは少しの間考えてから「まあ、試せばわかるじゃん」とユウゴの手から一つを取った。
「適当かよ。……ま、いいか。じゃあ、おまえらが駐車場まで行ってこれが使えればそのまま目標が来るまで待つ。使えなきゃ、また別の物を手に入れるってことで、いいな?」
ユウゴがまとめた意見に二人は頷いた。
「よし。じゃあ二人とも行ってくれ。着いたら連絡を。そうだな……。四回呼び掛けても俺が返事しなかったら戻ってこい」
「わかった」
織田が頷いて歩きだそうとした時、ケンイチがふと思いついたように口を開いた。

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