《MUMEI》
4回目―最後―
「な、なに言ってんの…?あんた、ゆびわ…」
言葉がうまく出てこない。
涙が流れるから余計。
「あぁ、これは…」
そう言って、ポケットの中から何かを取り出す石田の行動を、あたしはじっと見つめていた。
「いいかげんによー、お前は俺のものになれっつー話だよなー」
あたしの左のくすりゆびに、小さなダイヤのついたゆびわが。
「ぶっ、似合わねー!!」
豪快に吹き出す石田。こいつ、失礼極まりない。
「ペアだぞ、ありがたく受けとれ、このバカ!!」
よく見たら…あ、おそろいだ…
「だいたいなー、3回もふられた俺が、今さら他に行くかっつの!意地でもものにするっつーの!!」
あれ、石田、背高い…
小6のとき、あたしよりちっこかったのに…
「三十路まで一人だったらって約束、まさか忘れてねーよな」
―――――「30までに、結婚しなかったら」
―――――「今度こそ、俺がおまえもらうからな!」
「もういいかげんにしろよ。今度とゆー今度は断っても無駄だからな」
ポロポロポロポロ出てくる涙。
頷くことしかできない。
「おっまえ、そんなに泣き虫だったかー?」
自分のコートの袖で、あたしの涙をとる石田。
いつのまに、こんなにいい男になったんだろ…
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