《MUMEI》

息子の、その仕種を、照れ隠しかと思った道三は、ニヤリと笑う。

「…して、相手は誰ぞ?もう、決めた女子がいるのだろう?」

尋ねると、新九郎は俯いたまま瞬いて、それから意を決したように頬を引き締めると、パッと顔をあげた。

道三を見つめて、はっきりと答える。


「父上の愛娘、濃をわたしに頂けませぬか?」


一瞬、息子がなんと言ったのか、理解出来なかった。

……愛娘?
……濃、だと?

数秒の間の後、
道三は眉を吊り上げる。


「戯れはよせ!」


大音量で怒鳴り付けたが、新九郎は毅然としていた。

「戯れではございません。わたしは濃を」

「娶ると申すか!?」

新九郎が言いかけたのを道三は遮る。
道三は怒りで身体が震え出した。

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