《MUMEI》 宣戦布告どこかの国の姫君であれば、話も分からなくもないが、それが己の国の、あの濃姫…しかも、新九郎とは兄妹として育てた娘を貰おうなどとは。 …狂ったか? 道三は押し殺したような声で続けた。 「貴様、自分が言っていることが分かっているのか?」 父の怒りをよそに、新九郎は「はい」と淡々と答える。 「わたしと濃は、父上もご存知の通り、血の繋がりはございません。幼い頃より、わたしはずっと濃のことを、ひとりの『女』として見て参りました…誰よりも、一番近くで」 新九郎は苦しい胸の内を明かすように、続けた。 「濃には先に伝えましたが、父上の許し無しでは、なにも答えられぬと」 そこまで聞いて、道三は見る見る顔を強張らせ、「たわけ!」と叫ぶ。 「ふざけるのも大概にしろ!あれは、わたしのモノだ!!お前には遣らぬ!」 道三は立ち上がり、上から物凄い目つきで息子を睨み据えた。 「山里であれを見つけ、この俺の末娘として育ててきたのだ!お前にくれて遣ろうとしたわけではない!他ならぬ、俺の為だ!」 新九郎は鬼のような形相の父を見つめ、ゆるりと瞬く。 「承知しております」 前へ |次へ |
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