《MUMEI》

サラリと答えた息子を、道三はさらに睨みつける。

「ならば、諦めよ!あれはお前のようなひよっこに収まる器ではないわ!いいか?あれは『鬼』の娘…時を支配する一族の娘だ!」

まくし立てる父をじっと見つめていた新九郎は、「要するに…」と、ゆっくり口を開いた。

「…お許しは、頂けぬ、ということですか?」

道三は「当たり前だ!」と怒鳴り付ける。新九郎は俯き、「仕方ありませんね…」と呟いて、

キッと顔をあげた。
眦に鋭い光が走る。

新九郎は父を睨み返して、続けた。


「では、奪うまで」


凛とした響きをはらんだ声だった。
道三は眉間にシワを寄せ、「なんだと!?」と凄んだが、新九郎には効かなかった。

新九郎は父を睨みつけたままで、言う。

「父上が濃をわたしに譲らないというなら、わたしはそれを全力で奪う。わたしには濃以外、考えられぬのです」

新九郎の言葉を聞き、道三は、すっ…と瞳から光を消した。
本気で怒っている。
新九郎には、そう見てとれた。

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