《MUMEI》 サラリと答えた息子を、道三はさらに睨みつける。 「ならば、諦めよ!あれはお前のようなひよっこに収まる器ではないわ!いいか?あれは『鬼』の娘…時を支配する一族の娘だ!」 まくし立てる父をじっと見つめていた新九郎は、「要するに…」と、ゆっくり口を開いた。 「…お許しは、頂けぬ、ということですか?」 道三は「当たり前だ!」と怒鳴り付ける。新九郎は俯き、「仕方ありませんね…」と呟いて、 キッと顔をあげた。 眦に鋭い光が走る。 新九郎は父を睨み返して、続けた。 「では、奪うまで」 凛とした響きをはらんだ声だった。 道三は眉間にシワを寄せ、「なんだと!?」と凄んだが、新九郎には効かなかった。 新九郎は父を睨みつけたままで、言う。 「父上が濃をわたしに譲らないというなら、わたしはそれを全力で奪う。わたしには濃以外、考えられぬのです」 新九郎の言葉を聞き、道三は、すっ…と瞳から光を消した。 本気で怒っている。 新九郎には、そう見てとれた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |