《MUMEI》

やがて道三は、静かな声で、呟いた。

「…この道三に、歯向かう気か?」

脅すような口調にも怯まず、新九郎ははっきりと答える。

「時と場合によれば。この件は、わたしも引くつもりはありません」

新九郎はゆっくり立ち上がり、道三を一度見ると、「くれぐれも御油断されぬよう…」と一言残し、立ち去った。

広間に残された道三は怒りを抑える事が出来ず、傍にあった脇息を掴むと、先程まで新九郎が座っていた場所に向かって、思い切り投げ付けた。



******



−−−時代は急速に流れ始めていた。



時は流れ、

濃が17になった年、

かつて道利が、道三に言った通り、

土岐頼芸の支援をしていた織田信秀は、兵を挙げ、

道三の統べる美濃国、稲葉山城へと攻め込んできた。

無力な女子供を鷺山城へと避難させ、
残った男達は、篭城戦を繰り広げ、

織田軍を蹴散らし、大勝を治めることとなった。

後の世で、この戦は、

『加納口の戦い』と呼ばれるようになる…。



******

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