《MUMEI》

主の言葉に、
道利はニヤリと笑った。

「それに関して、按ずることはございません」

妙に確信を持った言い方をする家臣に、道三は眉をひそめる。

「…策でもあるのか?」

尋ね返した主に、道利はしっかりと頷いた。

「実は、戦が終結した折に、尾張の平手中務大輔政秀殿より、書簡が送られてまいりまして…」

平手政秀とは、古くから尾張大名・織田信秀に参謀として仕える家老。この度の戦も、平手が信秀を唆し、口火を切ったのだという話を風の噂で聞いていた。

…その平手が、書簡だと?

道三は訝しく思いながら、先を促した。

「なんと書かれていた?」

道利は表情を引き締めて、述べる。

「美濃と尾張、両国の和睦を申し入れてきました」

道三は眉をひそめる。道利はよく通る声で、話を続けた。

「土岐氏と美濃を巡り、争い合ったのも何かの縁…ここは両国が手を結び力を合わせて、他国の守護大名を牽制するべきだということです」

一通り話を聞いて、道三は唸った。

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