《MUMEI》 たまらず道利の方へ身を乗り出す。 「勝手なことを抜かしよって!誰がそのようなバカげた話を聞くか!!」 大音量で道利を怒鳴り付けた。道利はその剣幕に怯んだが、それでも尚、声を張り上げて続ける。 「殿が目に入れても痛くない程可愛がっている末姫を尾張へ嫁がせたとなれば、両国の繋がりは深いものだと、見せ付けることが出来る…それが平手殿のお考えのようです」 そこで一息区切り、道利は主をまっすぐ見つめた。 「わたしも、良い話だと思います。殿や姫様には心苦しいですが、この縁談が上手くゆけば、尾張の国も手に入れることが出来るか、と…」 思わせ振りな発言に、道三は興奮していたが、幾分その表情を和らげ、「どういうことだ?」と尋ねる。 ようやく聞く耳を持った主に、道利は不敵に笑って見せた。 「お忘れですか?織田の三男・上総介信長は幼名を吉法師…あの尾張の『うつけ者』にございます」 道三は口をつぐんで瞬いた。 以前、道利からその傍若無人な振る舞いに関して話は聞いていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |