《MUMEI》
ショータイム
―ガチャ!―
加奈子がドアノブに手を掛けるより先に扉が開いた。
「シュウ…ちゃん‥」
そこに立っていたのは修二と美雪、それに…
「おやおや、どちらへ行かれるのですか?お嬢さん。」
白髪混じりの中年男性が、二人の間を通って加奈子の前に立ち塞がた。
見た事のある顔だった。
「あなたは…」
以前、テレビに出ていた精神科医。
確か名前は…
有馬貞夫。
「ほぅ、私の事をご存知で?」
加奈子を見下ろす有馬の目がギラリと光る。
「ところで、君は加奈子さんでしたかな?どちらへ行くつもりなのかね。」
「決まってるじゃない!リョウを助けに行くのよ!」
今にも噛み付きそうな形相で加奈子が言うと、三人はゲラゲラ笑い出した。
「アハハッ!助けるだって?あんた、やっぱ救いようのないバカだわ!」
「加奈子、いい加減判れよ。あいつは悪魔だぜ?この世に居ちゃいけないんだ。」
「うるさい!黙れ!!リョウは悪魔なんかじゃない!」
「黙るのは君の方だよ、加奈子さん。」
怒りが爆発して取り乱している加奈子を宥めるよう、有馬は静かに、しかし圧力のかかる声で言った。
「今何処かに行ってしまうのは実に惜しい。本当は部外者はお断りですが…折角だ、君には特別に見せてやるとしよう!」
有馬がそう言うと、修二と美雪は加奈子の両腕を掴んだ。
「やだ!離してっ!」
振りほどこうと暴れてみたが、美雪はともかく、男である修二の力には敵う訳がなかった。
「暴れんなって!今そのリョウ君とやらに合わせてやるからよ。」
「え?」
その言葉を聞いた瞬間、加奈子は暴れるのをやめた。
「まぁ座りなさい。」
先程まで眠らされていたソファーに無理矢理座らされる。
「ではドクター、始めます。」
美雪はそういうと、リモコンのような物をポケットから取り出し、赤いボタンを押した。
広い部屋に美雪の甲高い声が響き渡る。
「イッツ!ショーターイムッ!!」
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