《MUMEI》
特別な名前
コイツはヤバイ…


アルゴンは、ネオンと同じように、少女を警戒し


自分から


クーから、遠ざけなければならないと考えていた。


一方、クーは


全く別の事を考えていた。


「…決めた」


クーはそう言って、少女を真っ直ぐ見つめた。


「君の名前は、エアーにしよう」

「おい、クー!?」

「いい名前でしょ?」


クーはにっこり微笑んだ。


『エアー』


それは、かつて、世界共通語とされた言葉で


『空気』という意味だ。


また、空気屋のクーが扱う空気の中で、最上級のものも


エアーと呼ばれている。


つまり、それほど特別な名前だった。


「君の事、これからエアーって呼ぶけどいい?」


クーはアルゴンを無視して少女に話しかけた。


少女は、否定も肯定もせず


ただ、不思議そうにクーを見つめていた。


「名前が無いと、不便だから、ね?」

「…」

「ね、決まり」

「…」


そして、この日


少女は、『エアー』になった。

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