《MUMEI》
プロローグ
「すごい!!」
「また、あの人が一位なの?」
「最初っから頭よかったもんねー」


まただ。
どこに行っても変わることのない言葉。
テストで一位を取るたびに言われ続けてきた。


「てかさー、頭いいなら塾来なくてもよくない?なんで来てるの?」
「さぁ?頭いい人の考える事なんて、うちら馬鹿には分かんないって!」


笑い声がこだまする。

お前らに何が分かる。
いや、理解されてたまるか。

あたしの苦しみを…
誰も分かるもんか。


「よくやったなぁ、竹内。先生も鼻が高いぞ!
入塾してから、ずっと首位だもんな!
これからも頑張れよ!」

誰の為に?
先生の為に?

いろんな疑問が浮かんだが、飲みこんだ。


「はい…」


あたしはそれだけ言うと、まだ何か言いたげな先生の横を抜け、塾を出た。

外にはすでに何人かの生徒がたまっていて、皆、塾から出てきたあたしを見ていた。


あたしはまるで、牢獄から出てきた囚人…


あたしはそんな視線を気にしないように、歩き始めた。

家から塾までそんなに遠くないので、いつも歩いて来ている。

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