《MUMEI》
夢で見たひと
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濃を乗せた輿が無事に尾張の那古野城へ着くと、尾張大名・織田信秀とその北の方・土田御前が丁重に迎え出た。

すぐに簡単な宴が開かれ、織田家の者達と顔合わせを済ませたのだが、どういう訳か、濃の夫となる、信長の姿が見つけられなかった。

不思議に思い、各務野が平手政秀に尋ねると、彼は困惑気味に目を逸らし、「…若殿は、しばし席を外されていて」と曖昧な返事を貰った。

結局、宴が終わる時になっても、信長は姿を現さなかった…。



宴を終えると、濃と各務野は那古野城の奥殿へ連れて行かれた。

濃の為に設えられた部屋は、美濃の稲葉山城のそれより数倍広く、庭がよく眺められるようにと、縁側もある明るい場所だった。

各務野はそこに濃を残し、那古野城の侍女達と話をする為、一時、席を外した。

ひとりで部屋に残された濃は、縁側から覗く、広い庭園をぼんやり眺めていた。


−−−そして、
なぜ、信長が宴に最後まで姿を見せなかったのかを、考え始めた。

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