《MUMEI》 少年は濃を解放し、その場に立ち上がると、集まった皆をぐるりと見回した。 そこにいる全員の顔を見て、やがて、高らかに名乗る。 「俺は上総介信長だ!尾張の信長様は、ここにござるぞッ!!」 それを聞き、各務野は一層青くなった。 …この方が? にわかに信じられず、呆然としている各務野をよそに、 濃は居住まいをただし、少年…信長に向き直ると、三つ指をついて深々と頭を下げた。 「…美濃から参りました、濃にございます」 濃はあえて、父から賜った名を口にした。 その囁きに、 信長は振り返り、濃を見つめる。 彼は満足そうに頷き、言った。 「…ご苦労であったな。美濃の蝮の庇護を離れ、尾張までよくぞ参った。その度胸、褒めて遣わそう」 濃はゆっくり顔をあげた。信長と目が合う。 前へ |次へ |
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