《MUMEI》

濃の言葉に、信長はバカにするように、フン…と鼻を鳴らした。

「俺の意図が読めぬとは、『美濃一の才女』も対したことはないな」

やはり、皮肉を口にする。

彼に何を言っても無駄だと思った濃は、口を閉ざし、再び元いた場所へ戻ろうとした。

その背中に、
信長が小さく呟く…。

「すぐ傍にいなければ、お前は…」

微かな声に、濃は振り返った。

「…なんでしょうか?」

言葉の終わりがよく聞き取れず、尋ね返すと、
信長はまた、鼻を鳴らした。

「俺に聞くな。自分で考えろ」

素っ気なくそれだけ口にすると、彼は再び、ゴロリと横になった。


傍若無人な信長の姿を見つめながら、

濃は、ふと、思う。


…目の前にいる、この少年は、
本当に、あの吉法師なのだろうか。

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