《MUMEI》 ひそかに考えを巡らせる濃を尻目に、 信長は突然、勢いよく起き上がった。 「退屈だ!」 不機嫌にそう叫んだかと思うと、彼はすぐさま立ち上がり、スタスタと部屋から出て行こうとした。 それを、濃が呼び止める。 「どこへ行かれるのですか?」 凜とした妻の言葉に、 信長は面倒臭そうに振り返ると、 ピシャリと言い放った。 「お前には、関係ない」 濃が呆気に取られている内に、 信長は音も立てず、まるで風のように颯爽と部屋から消えていってしまった。 いつもそうだ、と濃はひとりごちた。 …風のように現れて、 全てのものを巻き込み、散々掻き乱した後、 また、風のように去っていく。 信長は、そういう男だった。 ひとり、残された部屋の中で、 濃は人知れず、深いため息をついた…。 ****** 前へ |次へ |
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