《MUMEI》

「鈴音の考えるコトなんて、お見通しよ。」


絢南にそう言われて、あたしは口を尖らせた。


「大方、沢谷が電車で来る時間を狙って、登校してるんでしょ?
だから沢谷も遅刻ギリギリって訳だ。」


うぅ…、っとあたしは唸った。

確かに、絢南が言っていることは、すべて事実だ。

ここまで図星を突かれるなんて…悔しい。

こうなったら開き直るしかないな!!


「えぇ、そーですとも!沢谷が乗って来る電車をいろんな人に聞きこみ、ようやく時間がはっきりしたのさ!
そしたら、いかに自然に着いていけるか研究を重ね…」

「はい、終了。ストーカー講話は後で聞くわ。
とりあえず、今は教室移動しよう?」


気がつくと、朝のHRはもう終わり、みな次の授業の準備をして、移動していた。

教室には、あと数人しかいなかった。


「やばっ!次、化学じゃん!まだ準備してない!」


あたし達は慌てて、化学の教科書を掴み教室を飛び出した。

結局、化学の時限もギリという、なんとも締まらないものである。

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