《MUMEI》

「じろー、起きな。」

七生に額を叩かれ、俺は起きたフリをする。
しかし、まだ頭は重たい。

「おはようございます。」

乙矢がにこやかな挨拶で迎えてくれた。


「おはようございます……」

盗み聞きした後は目を合わせずらい。


「ダーリン、おはようのちゅーは?」

七生、お前って奴は……!ちょっと見直したのに。


「言ってろ。」

つい、メニューで叩いてしまった。


「イッテェ!」


「……慰めようか?」


「ダメ!」

さっきの二人の会話を聞いたせいでつい声を荒らげてしまった。



「妬いてる?」

七生、嬉しそうだな。


「ち、ちがうよ!
七生って女の人にすぐ好かれるからいちいち気にしてられないし、俺が七生を好きなように七生も俺を好いてくれるんでしょ?」

言い訳のつもりが告白みたいになってしまう。


「うん、俺も二郎が世界中で一番好きだよ?」

力が入らない程の王子様の声に、胸が高鳴る。



「ななお……、ちゅー……」

人差し指を下唇にあてて、催促した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫