《MUMEI》 「じろー、起きな。」 七生に額を叩かれ、俺は起きたフリをする。 しかし、まだ頭は重たい。 「おはようございます。」 乙矢がにこやかな挨拶で迎えてくれた。 「おはようございます……」 盗み聞きした後は目を合わせずらい。 「ダーリン、おはようのちゅーは?」 七生、お前って奴は……!ちょっと見直したのに。 「言ってろ。」 つい、メニューで叩いてしまった。 「イッテェ!」 「……慰めようか?」 「ダメ!」 さっきの二人の会話を聞いたせいでつい声を荒らげてしまった。 「妬いてる?」 七生、嬉しそうだな。 「ち、ちがうよ! 七生って女の人にすぐ好かれるからいちいち気にしてられないし、俺が七生を好きなように七生も俺を好いてくれるんでしょ?」 言い訳のつもりが告白みたいになってしまう。 「うん、俺も二郎が世界中で一番好きだよ?」 力が入らない程の王子様の声に、胸が高鳴る。 「ななお……、ちゅー……」 人差し指を下唇にあてて、催促した。 前へ |次へ |
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