《MUMEI》 . 不安そうなあかねさんの表情を見つめながら、 わたしは、教えてあげようか?と、おもむろに言った。 あかねさんは、え…?と首を傾げる。無邪気な瞳をまっすぐわたしに向けていた。 演技かも知れない。 ホントはなにもかもを知っていて、でも、知らないフリをしているのかも。 けれど、 それももう、どちらでも構わない。 知っていようが、いまいが、構わないのだ。 尚と、あかねさんの絆を、 壊すことが、出来るなら−−−。 残酷な気持ちに取り付かれたわたしは、 あかねさんの顔を見据えたまま、 不敵に笑った。 「尚の、『好きなひと』ってヤツ」 それだけ言うと、サッとあかねさんの表情が強張った。緊張しているのか、唇をきつく引き締めて、瞳を潤ませている。 わたしはそんな彼女を見て、 フッと目で笑って見せた。 「それたぶん、わたしのこと。尚、わたしのこと、ずっと、好きだったの。びっくりでしょ?キョウダイなのにね」 わたしの台詞に、あかねさんの顔がみるみる青くなっていった。 わたしは早口に、お幸せに、と吐き捨てて、呆然とするあかねさんを残し、さっさとカフェから出て行った。 . 前へ |次へ |
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