《MUMEI》 冷たい風と口論. ぼんやりとしているわたしのバッグの中で、 突然、 携帯が震え出した。 わたしはゆっくりバッグから携帯を取り出し、 相手を確認する。 −−−尚だった。 驚きは、なかった。たぶん、そうだろうな、と予想はしていた。 わたしは落ち着いて、電話に出る。もしもし?と、尋ねると、尚がものすごい勢いで話し始めた。 『芽衣!?お前、変なことあかねに言ったろ!?』 尚は怒っていた。その理由も、分かっていた。おおかた、あかねさんから今日のわたしの言ったことを、聞いたのだ。 わたしは瞬く。変なこと?なにそれ?と落ち着き払って尋ねると、尚はより一層怒った。 『しらばっくれるな!!さっき、あかねから電話があったんだよ!!』 わたしはまた瞬いた。寒さで鼻先の感覚がない。ズズッと、鼻水をすすって、わたしはため息をついた。 「べつに、変じゃないでしょ。ホントのこと、言っただけだし」 悪びれず、言い返すと、尚はすかさずまくし立てた。 『あかね、すっげー取り乱して大変だったんだぞ!!お前、自分でなに言ってんのか分かってんのかよ!』 「分かってるよ。だから言ったの」 淡々と答えた。指だけではなく、身体中が冷え切っていた。わたしの心さえも。 . 前へ |次へ |
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