《MUMEI》 「…?」 リツは手元の水晶とフルアを見比べた 「…これは?」 [お前と同じ、凶暴なヤツだ…似た者同士なら、上手くやっていけるだろう] フルアは困ったように笑った 「俺たちは…」 ジンはフェニックスの美麗な背羽毛を撫でて訊く 「旅立つ…んですか。」 フルアが頷く […これから正式に、ドレイスとなってエヴァードを支えなさい。しかし、生命の危険は否めない] 「まだ…っ」 [お前たちが] リツの言葉を遮ってフルアは言った もちろん、唇は動かさずに […お前たちの持つ疑問は、旅の中で解きほぐされ、昇華するはず] フルアは左腕を再度真横に伸ばし、 空間にゆっくりと円を描いた。 手が通った数十m先の空間には、紫の切れ目が生じた 円が出来上がると、線の中は暗黒に染まった。 フェニックスは一声鳴いて 迷いも無くそこへ飛び入った。 [この先に、お前たちが守るべき存在が待っている。…行かなければ行かないで、私はまた次の選ばれし者を、見つめるだけ] フルアは空間の穴を指した [しかし…ジン。行けばお前の両親のことも分かるはずだ] 「…俺の」 ジンは決心した様に 唇をかみ締めた そして相棒を見る 「……」 リツはなんとも形容しがたい表情を作っていた ジンはリツの手首を掴んだ 「らしくないな…迷いがあるなんて。 今度は、俺が背を押す番だな?」 「…確かにらしくないな、俺」 「なんだ、怖いのか?」 「………」 「俺たちは何の為に、守校にいたのか忘れたのか?」 ジンの手に力が増す。 「行くぞ、龍翼」 惑うリツの瞳に 燈が灯る。 リツが頷き ジンも頷いてリツの手を引く そして、走り出す 黒の入口は見た目より 遠かった 走り 走り 走り 『黒』に 飛び込んだ […頑張れよ] フルアは祈るように、言った --------------------------------- 前へ |次へ |
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