《MUMEI》

「正直に言うんだ…アキラ」
「………」

俺に腕を掴まれたまま視線を合わせないアキラの横顔が、今にも泣いて崩れそうになっている。

アキラのそんな顔を見るのは久しぶりで…興奮してしまいそうになった。

「ぼ…僕が……男になってもいいじゃないですか///」
「…ぁ…アキラ?」

ようやく観念したように口を開いたかと思ったら、アキラは俺のジャケットを握りしめながら下を俯いて、言ってしまった事を後悔するように肩を落としていた。

その…アキラの言っていた相手との浮気を疑ってはいたが。

”男になった”…とは予想外だった。

「………本当か?」
「ぇ///…ほ…本当ですよ、僕が見栄張って言ってるワケ無いじゃないですか///」

…アキラが見栄を張って男役になったと言ったとは思ってもいなかったが、もしそれが本当なら…。

興味深いな…。

「その…アジア人の友人か」
「台湾の子です…林…あの…ジェイミー…」
「ジェイミー?」

(…ん?)

「エイミーやジェイニーじゃなく?」
「ぇ…ジェイミーです…けど?」

その名前の意味にアキラは気が付いていないようで、俺の顔を見つめながらきょとんとしていた。

「あぁ何だ……女性じゃなく男性なのか…」
「…えっ、じ女性///」

それを聞いて、なんとなくやっぱりというかガッカリというか、ちょっと変なんだろうがホッとした気持ちになった。

「ジェイミーは男性の名前だ、ジェイニーだったら女性なんだが…」
「そ、そんな……あっ///」

今まで俺がアキラの浮気相手が”女性”だと勘違いしていた事に気が付いたようで、顔を赤く染めながら慌てていた。

「じぇ…ジェイミーは…女性っぽくはあったけど///」
「ニューハーフなのか?」
「ち、違います///ちゃんと男の子ですよ///」
「なぁに…ケンカしてゆの?」

言い合っていた声を聞いて自分の部屋で遊んでいた筈のくるみがリビングまで出てきて、可愛らしくマントと冠を付けてポカーンと立っていた。

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