《MUMEI》

視線の感じる方をむくと、そこには沢谷と沢谷の前に座っている高松 裕真(たかまつ ゆうま)がいた。


さ…沢谷がこっちを見てる!
ヤバイ!!
微笑み返すべきか…
いや、ここはあえて気付かぬ振りか…


なんて、あたしが頭の中で葛藤していると、とんでもない会話が聞こえた。


「こっわー。『馬鹿じゃん?』だって。
まだ入学して、1ヶ月ちょっとなのに、言われちゃったねー。
あの人、東野さん…だっけ?
怖い人だな。
沢谷も俺も目つけられないようにしないと。」

「そうだな。」


ははっと笑いながら2人は話してた。


あたしは衝撃をうけた。

もしかして…あたし怖がられた?
もしかして、もしかしなくて怖がられたじゃん!

沢谷の頭の中で、あたし=怖い人、という方程式が出来たに違いない。

あたしは頭を抱えた。


そのとき、高松君とバチリ目がとあった。

高松君は慌てて、あたしから目をそらし、沢谷とまた話し始めた。


そうだ…
高松君が余計な事を沢谷に吹き込んだんだ。
コノヤロー…


沸々と怒りが込み上げてきた。
しかし、なるたけ顔に出さないように気をつけて、あたしはまた、携帯に目を落とした。

と、その時。
先ほど出ていった、2人が先生を連れて帰ってきたのだ。


クラス中の人間がため息をついた。


ホントにやってらんないよ。
沢谷には怖がられるし…ツイてない。
それはそうと…
高松君…あの野郎。
絶対許さないんだから!


みんなが先生を呼んできた2人への怒りを感じている中、あたしは一人、高松君への恨みだった。


こうして、あたしは高松君が嫌いになった。

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